2015年9月27日日曜日

残留を目指して戦うこと

今回は、我々が今年のユースリーグ2部で置かれている状況と、戦い方について少しお話できればと思います。

現在、我々は4節終わって、1敗3分で18チーム中14位で、降格ギリギリラインに位置しています。
去年は3部で優勝争いをすることを義務付けられてましたが、今年は2部で残留が目標。年間34試合を戦って、40ポイントを目安にポイントを積み重ねていかなければなりません。

去年とは全くと言っていいほど、選手の特徴は違いますし、80%の選手がクラブ外から来た寄せ集めのチームです。レベル的にも2部を戦うにはギリギリの選手たちで、2部の上位チームのセレクションを受け、漏れた選手たちが出場機会を求めて私達のクラブに来るといった状況です。

さてそんな状況の中、クラブから残留が目標と言い渡され、戦術、技術的に残留すらギリギリラインだとしたら、どうすればいいでしょうか?



我々は負けないチームを作ることを目指しました。
とにかく守備組織を徹底的につくり上げること。プレシーズンはほとんどの時間を守備戦術のトレーニングに費やしました。幸運なことに体の大きさだけは平均以上なので、そこを活かし、ボールを支配されながらも、相手を快適にプレーさせない、相手の特徴を徹底的に潰していくことを考えて組織を作り上げます。

攻撃は、ロングボールを中心に相手エリアに侵入します。しかし、ただロングボールを蹴るのではなく、例えばビルドアップ時には、ボランチの一人がDFラインに落ち、もう一人はボールサイドのサイドバックより少し高いぐらいの位置に、右サイドバックは高い位置をとり、左は足元中心で中間ポジション、サイドハーフの選手は中に入りインサイドへのパスを探りながらセカンドボールに対する数的優位を作り、攻撃的MFはライン間でセカンドボールを拾える位置に立ち、FWは相手の裏を取りに行く、と言った一連の決まり事を守りながら、ロングボールを使い、オーガナイズされた状態でセカンドボールを拾いに行きます。



ここ4試合、実力上位との対戦が続き、勝ち切れない試合が続いていますが、昨年までエリートとして勝つ試合を続けてきた選手が、この守備的な戦術をある程度理解し、表現できるまでやっと追いついてきたといった感じです。

支配率は相手が上で、引き分けが続いているものの選手たちの感触もよく、シュート数では我々が上回り、快適にプレーをさせていない点では、選手たちにも『これで行ける』という自信が芽生えてきているので、後は勝利というカンフル剤が整えば、チームとしてもう一つ上に向かえそうな雰囲気が出てきています。



2部且つ残留が目標という初めての体験を通して思うのは、毎週がヒリヒリするということ。実力が上位なら負けはしても残留を狙えるものの、我々のような下位のチームは勝点が計算出来ないので、どうやって毎試合1ポイントを削ぎ取ることが出来るか、そしてそれをどんな手を使って3ポイントにするかを毎日、毎週、毎週末、考え、考え、考えて、計画を立てており、1つの負けが降格に繋がるかもしれないと思うと、試合中に胃が出てきそうなくらい緊張します(クビも考えられるので。。。)。


(地元のおじさんたちが見に来てくれます)

そしてここで本当に感じるのは、サッカーはサッカーであって、ボールを繋ぐことだけがサッカーではないということ。勝つために現実的で理想的な方法を監督陣が考え抜き、それをトレーニングとして落とし込み、選手は試合で表現する。きっとサッカーはもっと多様で、面白いものだし、監督が勉強し考えぬいた結果の戦術であれば、誰にも批判されるようなものではないと思うのです。ロングボールだって良いじゃない、繋いでも、サイドアタックでも、4トップでも0トップでも良いじゃない。

自分自身、もっとサッカーの多様性を受け入れ、その可能性を楽しむことが大切だなと感じています。

来週こそは2部初勝利をもぎ取ってきます!!!!

2015年6月3日水曜日

来シーズンの去就

ご無沙汰しております。

ここバレンシアは6月に入り全てのカテゴリーのリーグが終了し、来シーズンに向けてのセレクションの時期になりました。

私の今シーズンの成績はというと、U11では監督として5位、またユースCチーム(3部所属)では第二監督として、Aチーム(1部所属)が2部に降格したため我々が昇格戦を戦えなかったものの、リーグで2位という成績を収めました。

さてさて、標題にあるように来シーズンの去就についてですが、3年半、スペインに着いた3日目からお世話になってきたアルボラヤUDを出て、私の第一監督スソとタベルネス-ブランケスというチームのユースAチーム(2部所属)を引き受けることになりました。

2部のLiga Nacionalは、我々2人にとって未知の体験ですし、3部とは違う次元のサッカーが待っていることと思います。しかも、バレンシアCF、ビジャレアルCF、レバンテUD、エルチェCF、エルクレスCFとプロクラブが対戦相手として名前を連ねることとなります。

正直、アルボラヤUDを出るということは苦渋の決断でした。
右も左もスペイン語も分からないアジア人を引き受けてくれ、更に去年からは第一監督を任せてくれ、家族の様に接してくれた仲間たちとの別れは非常に悩ましいものでした。

しかし、更に高みに登るため自分を試すためには一度外に出て、修行してくれるのもありだと思い、今回の決断に至りました。

今だにこの決断が正解かどうかという問いが頭の中によぎることもありますが、せっかくのチャンスなので最大限に利用し、楽しんでいきたいと思います。

さて、来季のために6月末から1ヶ月半近く日本に帰国します。
皆様にお会いできるのを楽しみにしております!!!

2015年4月17日金曜日

U14日本チームのアテンドを終えて

3月末から4月頭にかけて日本のU14のチームのアテンドをさせていただきました。
今回は、会社の人間が一丸となって、先方と時間をかけて選手の経験を最優先に考え、遠征を練ってきたため、普通の遠征とは一味違うものとなったと思います。

今回我々がオーガナイズ側として新しく挑戦した事は、バス移動は長距離移動以外減らして、出来るだけ個別行動を増やし、スペイン人の生活様式に近づけること。
1.小グループに分かれての現地チームとの合同練習
2.2人組でのホームステイ(選手たちにはトレーニングの時間だけを伝えてホームステイ先から合流クラブに自分達だけで行ってもらいました:リスクはコントロールしています)

バスで移動し、すべてオーガナイズされた中で親善試合をする。

間違いないこれも経験になると思います。
ただ、そこに私は何故スペインなのか?何故海外なのか?という所が深く掘り下げられていないように感じており、以前から選手たちが自分たち自身で見て、聞いて、嗅いで、肌で感じてという遠征をしたいと思っていました。



大人がコントロール出来る危険であれば子供達に体験させていいのではないか、海外で生活することは楽しいことだけじゃないし、本当のスペインを知って欲しい。それでもしスペインを嫌いになってしまっても、それだって経験だと思えるし、それでこそ自分の言葉で本当の経験を語ることができるようになる、という思いでオーガナイズさせて頂きました。

正直、今回の遠征は以前よりも3倍近くのエネルギーと時間を使いました。個別行動になることにより、連絡先も増え、説明の回数も増え、リスク管理するべき事柄も増え、もちろんクレームも増えました。ただ遠征が終わって心から言えるのは、この遠征は間違いじゃなかったということ。


その理由は2つ。
1.短期間にも拘らず、選手の変化が目に見えて分かったこと
(変化する選手、しない選手の違いが明確に分かりました:一言で言うと『琢磨しさ』)
2.選手の見えていなかった部分が見えたし、再確認できた
(チームの指導者から頂いた言葉で、試合のメンバーの組み方が変わるほどでした)

非日常、自分の想定していないことが起こる中に入ると、本当の自分が見えてきます。海外に出るということは想定外の連続でそれこそが人間力、胆力の試される場所に成るはずです。また、指導者側が注視しなければならないことです。問題が起こった時に、誰かに頼るのか、自分で解決しようとするのか、質問するにしてもどんな質問の仕方をしてくるのか、事前にイメージができているのか、日常のトレーニングだけでは見られない部分がたくさん出てくるからこそ意味があると思うのです。



今は、情報が溢れて何が正しくて、何が間違いっているかを自分で判断しなければならない時代。自分の目で見て、聞いて、嗅いで、肌で感じたことは紛いもない本物。それを若くして経験できることは将来の財産に成るはずです。

なかなか出来ない海外遠征だからこそ、その効果を最大限に引き出し、選手の可能性を引き出す事ができるよう、我々もプログラムを進化させていきたいと思います。

2015年4月9日木曜日

監督をシーズン途中から引き受けるということ

途中からU11の監督を引き受けてから2ヶ月が経ちました。
上位対決を僅差で落とし、現在は4位に位置づけています。

さて、今回は途中から監督としてチームを率いることになり、気をつけていること、気がついたことを書いていきたいと思います。

まず、就任1週目にしたことは、選手を徹底的に分析すること。
技術レベル、戦術理解度、性格、フィジカルを数値化し、当時のポジションを鑑み、それがチームとしてどう機能しているのかを確認しました。
そこから、前任の監督の今までのトレーニングを確認し、これからの予定を立てます。

ただ、ここで気にしなければならないのが、就任2週間は選手からの信頼が無いということです。更に、私は彼らにとって外国人なので更に信頼が無いのは明白です。
信頼がなければ、この監督が勝たせてくれる監督なのか、自分を成長させてくれる監督なのか、選手たちもこちらを探り探りなので、トレーニングの精度、強度は下がります。

こそで必要なのが勝利です。

勝利をすることで選手の信頼を得ることが出来る。勿論、勝つことが全てじゃない。そう信じています。でも勝たなければいけないのです。それは、良いトレーニングをするため、残り少ないトレーニング期間を有意義にするために必要なことです(このメンタルはスペイン特有かもしれません)。

そこから導き出した答えは、守備戦術の徹底。
前任監督が採用していた1-3-2-2から1-3-3-1にシステムを変更し(相手も1-3-3-1)、中盤を厚く、守備陣系を整えやすいシステムにし、攻→守のプレッシャーのかけ方、相手がボールを保持している時の守備の優先順位を確認し、そこからボール奪取→速攻という流れを2週間で徹底的にトレーニングしました。
それにより、守備が落ち着き就任から2週間を2連勝で飾ることができ、選手の信頼を得ることに成功しました。



そこから、上位対決2連戦をFK1本でやられてしまいますが、選手たちには『守り切ることが出来る』という自信が付いたようで、私が守備の際に『Orden(整えろ)』という一言を発するだけで、守備陣系が整うようになってきました。

途中から監督を引き受けるという貴重な体験から得られたことは、自分の分析から得た答えを徹底してトップダウンで決め付けて、落としこむ方法もありだということ。
『この場面では、こう動いて、ここに立たなければならない。何故ならば、・・・』と、例外なくそれを実行しなければならない事を伝え、彼らの中に疑問が生じない様にしてあげます。
勿論、指導者としては他の選択肢があることも分かっているのですが、それを落としこむには時間がかかり、負けてしまってはその後の長期的トレーニングにさえ辿り着けない可能性(クビになる、選手の信頼を得られない)があるので、こういった方法を取り、とりあえず今のところ成功と言って良い成績を収めています。



1ヶ月半経った今は、再度残りの1ヶ月半の計画を立て直し、週末をきっちりと闘いながら、バランスの良いチーム、来シーズン(8人制→11人制)に向けて、選手がプレイしやすいようにトレーニングを考えていかなければなりません。

この経験がどう今後に役に立つかは分かりませんが、自分の中で一つ新しい指導メソッドを試すことが出来たのは大きな経験になりました。

残り1ヶ月半のシーズンを彼らと楽しみたいと思います!!

2015年2月11日水曜日

ご報告

なかなかブログを書けないでいましたが、少し状況が変わって来たのでご報告させていただきたいと思います。


端的に言うと先日、U10の監督を解任されました。


そして、U11の監督に就任しました。

というのも、ユーストップチームの監督が解任になったと同時に、彼が兼任していたU11監督も辞職されたので、U11の監督が空きになり、なぜか分かりませんが私に監督就任の話が回ってきました。

正直、今のチームを9月からここまで作ってきて、成績も2位と高位置に付け、選手からの信頼も得られている中でチームを変える必要があるのか、またこのまま今の選手達とシーズンを最後まで戦いたいという気持ちがあったのも事実ですし、わざわざ知らないチームをシーズン途中から引き受けるメリットを感じられませんでした。

ではなぜ引き受けたのか、その理由は一つだけ。
多分、誰も引き受けないから(笑)。天邪鬼。。。

U11と言ってもCチームなので、今指導しているU10のBチームよりも選手の質から言えば落ちてしまいますし、前任のユーストップ監督と比べられるし、チーム事情も今のチームほど良くない為、私の立場であれば誰も引き受けないだろうなと思ったのが理由です。

何がともあれ、この経験はきっとどこかで役に立つだろうし、海外で監督をしている日本人の中でも(U11ですが)途中からチームを見る経験をした人は少ないのではないかとポジティブに残りのシーズンを新しい選手たちと過ごしていきます。
実際、クラブがこういった状況の時に、私に声をかけてくれた事自体も嬉しかったですし。

ということで、2月からU11の監督として活動することになりましたので、これからもどうぞ宜しくお願い致します。